心を大切にしたい 板井 裕 [97/1/6]
高度情報化時代の到来が叫ばれてすでに久しい。でも今年はインターネットやマルチメディアなど様々なトレンドが組み合わさって大きな変革の波が押し寄せて来るのではないかと思う。その結果、私たちの暮らしは確実にこれまで以上に便利で文化的な暮らしに変わっていくだろう。でも、こうして社会の情報化が進んで便利になればなるほど、時折、寂しさと言うべきか不安というべきだろうか、何か得体の知れないもやもやとしたものを感じるような気がする。
「人」は元来とてもわがままな存在ではないかと思う。少しでも便利な、少しでも効率のいいものをと一生懸命追い求め、それが実現すると、喜びと同時に、寂しさや不安を憶えたり、また人間的なものが欠けてきたなどとブツブツ言い始める。戦後最長の不況に遭遇し、企業は生き残りを図ってなりふり構わずリストラを断行し、事業の再構築を行った。もちろん無駄があるよりは無駄のない方が良いし、また不便よりは便利の方が良いことは言うまでもない。少しセンチメンタルではないかと叱られるかもしれないが、でも私は、一生懸命働く人々の額から流れる汗の中に、その人の仕事に対するひたむきな熱意や思いが感じられるような気がするし、人と直接言葉を交わすことによって、喜びや悲しみをその人と共にすることができるような気がしてならない。
人間が人間である所以は、「心」で人肌の温もりや愛や喜びを、そして悲しみや苦しみを感じることができるからだと思う。熾烈な企業間競争の結果、効率や利便性を追い求め、ともすれば「心」の問題を疎かにしがちな私たちは、新しい年の始めに当たってもう一度原点にたち返る必要があるのではないだろうか。 (OCC会長)